成瀬つばさ リズムシさんのジッケンムシ

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日本茶検定に合格してから5ヵ月、先日ついに日本茶インストラクター協会が発行する資格「日本茶アドバイザー」認定試験に合格いたしました!
おそらく日本で唯一の、音大と美大で学んだ日本茶アドバイザーとして、日本茶の普及に貢献できるようにがんばります。

さてさて、日本茶に関する資格の勉強をしていく中で、どうしてもすんなり頭に入ってこなかった分野がありました。
それは日本茶の「歴史」について。
そもそも、なんとなく日本文化を好きになれない気持ちがあって、ある程度は勉強してきたはずだった日本史があまり頭に残っていなくて、うまく歴史の流れがつかめなかったのです。


・日本音楽のルーツとは


もともとクラシックやロック音楽を、音大に入学してからはジャズ、ファンク、フュージョンのようなジャンルでの演奏活動や、現代音楽の制作を行ってきましたが、いずれも西洋の音楽や、それらがベースとなっているものです。
これらの活動をがんばっていた時は、日本の文化や芸能について学ぶ必要性をどうしても感じられませんでした。

歌舞伎や能・狂言のようなメジャーなものは、教養としてある程度は押さえておかなくてはと思うこともあり、テレビで放送していればチラッと見てみることはあったけれど、どうしても面白さが分からなくて苦手意識を持っていたのです。

日本茶の勉強をきっかけとして、この機会に日本の歴史や文化のことをしっかり学び直そう!と一念発起。

まずはとにかく、恥ずかしいくらいに日本の伝統音楽のことを分かっていなかったので、基礎的な部分から少しずつ勉強していきました。
どうもいくつかの日本音楽のルーツは「声明(しょうみょう)」であるらしいということがわかりました。仏教の儀式で、僧によって唱えられる音楽です。
まずこれを徹底的に調べてみることに。
ちょうど、音大の後輩に声明を扱った音楽作品を作っている学生がいたので話を聞いたりもしました。
なんだか良くわからないし、音楽として面白いと思えない! というのが最初の印象。

しかし、楽譜と対応させながら聴いたり、音程の変化をしっかり聴きとってみたりすると、
きちんと構造を理解することができたのです。思ったよりもずっとシンプル。
理解が深まり、聴き慣れる頃には色々な宗派の声明を楽しく聴けるようになっていました。

そして、声明から発展していった多くの日本音楽は、節の付け方やメロディラインも似ている部分が多く、そちらも違和感なく聴けるように。
気がつけば、日本音楽に対するアレルギーはほぼ無くなっていました。





今回のアプリにも、「日本風」な楽器音がいくつか使われています。
さすがに付け焼き刃な知識をアプリに導入するのは難しいと思ったので、あくまで「日本っぽいイメージ」というところに留めています。
生成音楽的なシステムと、生々しい本物の楽器音は相性が良くないという都合もあり、和楽器風のシンセ音を使っています。
どちらかといえば、きちんと学ぶ前に思い描いていた「イメージの中の日本音楽」という感じを意識しつつ音色、音列を決めていきました。

いつかは本格的に日本の楽器で遊べるアプリもつくってみたい。
「お囃子ムシ」みたいなものを!


・お茶を学ぶと日本の文化が見えてくる


さてさて、声明について理解を深めようと、日本での仏教の歴史を辿っていくと、
驚くほどお茶の歴史と関係が深いことに気が付きました。





お茶は中国から伝わってきたもの。仏教も中国(発祥の地はインドですが)から伝わってきたものです。

歴史の教科書で誰もが覚えた「遣唐使」が中国で仏教と同時にお茶を学び、その種や苗を持ち帰るというパターンがとても多かったのです。
昔のお茶はほとんどが抹茶でした。それは仏教との関係も深いものでした。
禅宗の一派である臨済宗の日本での開祖、栄西はお茶の歴史上重要な「喫茶養生記」も書き記しました。
そして、戦国時代に有力大名と結び付き、強い影響力を持った茶人たち。
彼らの多くも禅を学んでいました。現在では茶道と禅の概念は切っても切り離せないものとなっています。
その茶人が日本の陶器を発展させ、作法の見本となり、日本庭園を作りました。
ある意味では「茶」がこの時代の中心となり、文化を発展させたと言えなくもありません。

ちなみに以前の連載 「日本の音を聴いてみよう!!」で取り上げた「水琴窟」は、日本庭園での音のインスタレーションとも言えるものですが、これの原型を作り上げたのも茶人である小堀遠州だったりします。

日本の美意識といった時に思い浮かべる、侘び寂び、数寄、そういったものも茶道がベースとなっています。





ちょうど今年は生誕150年かつ没後100年ということで、日本のあちこちで展示やイベントが行われている、岡倉天心という人物がいます。
西洋化が進む明治の日本で、日本美術を守るために奔走し、東京藝術大学の前身である東京美術学校の設立にも貢献した人物ですが、日本のお茶を世界に広めた功労者として、お茶関係の本には登場します。

岡倉は、お茶について英語で記した「Book of Tea」という本を1906年にニューヨークで出版し、これが大ヒットしました。「Book of Tea」の中で岡倉は、茶道を中心に日本の美意識、日本の美術について言及しています。

茶の本 (岩波文庫)
日本語訳版『茶の本』(岩波文庫)


お茶の精神と日本の美術も、結び付きが強いものなのです。

ともかくお茶の勉強をしたことで、日本の文化・芸能・美意識・歴史にまで理解を深める事ができて、大変勉強になりました。
そして前編で紹介した「音の探検隊」で各地をまわって、日本の四季による自然の変化、音環境の変化も体験することができました。

「日本茶ムシ」制作を通じて、たくさんの事を学べたことを本当に嬉しく思います。


・せっかくなら日本茶を飲んでみよう!


最後に、勉強して分かった日本茶の健康効果について少し!

煎茶に含まれる、カテキンやビタミンCにはたくさんの健康効果があります。
美肌効果、肥満防止、高血圧予防などなど……。
玉露のような高級なお茶よりも、手軽に購入できる煎茶の方がビタミンC、カテキンともにたくさん含まれているんですよ。

アプリの中でもその健康効果について、いくつか簡単に説明しています!
ぜひぜひ、チェックを。

もちろん劇的な効果があるわけではありませんが、ちりも積もれば山となります。
お茶一杯の成分はほんの僅かなものですが、嗜好飲料は毎日飲む習慣がつきやすいもの。
珈琲や紅茶を飲む習慣のある人は、日本茶も飲んでみることをオススメします!

統計上では、若い世代ほどお茶の消費が少なく、急須で入れる習慣もないようです。
学校生活や、仕事で、忙しすぎるのかもしれません。しかし、その世代がそのまま歳を取っても、急須を使ってお茶を楽しむようになるでしょうか。
ペットボトル茶の人気は高いため、お茶自体に興味がないわけではないはずだと思います。

このアプリで遊んで、ほんの少しでも、茶器とお茶の葉を買ってきて淹れてみよう! っていう人が増えたらうれしいな。
おいしいお茶をつくりだす技術、美しい急須や茶碗をつくりだす技術も大切な文化です!













※本コンテンツはPC専用です。動作環境によっては正常に動かない場合があります。
音を楽しむ作品ですので音量を調整してお楽しみください。
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2013/12/12 更新




成瀬つばさ
(なるせ・つばさ)

国立音楽大学にてコンピュータ音楽を研究しながら、ジャズピアニスト・キーボーディストとしても活動。卒業後は多摩美術大学大学院に進み、サウンド&メディアアートの研究・創作を行う。代表作であるiOSアプリ「リズムシシリーズ」は、平成23年度文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門新人賞ほか多数受賞、ダウンロード数は総計370万を超えている。






『リズムシシリーズ ボイス付きマスコット』
おなかを押すとサウンドが鳴る! 可愛いリズムシストラップです。






リズムシiPhone4/4Sカバー
リズムシの世界観そのままに、手描きのイラストが可愛いカスタムカバーになりました。※ iPhone 4/4S専用です。




この連載がアプリになったよ!
リズムシシリーズ「ジッケンムシ」 第一弾リリース!!

iPhone、iPadユーザーの皆さん、お待たせしました! この連載をまとめたアプリ第一弾がリリースされました。今後も連載に合わせてぞくぞくリリースしていく予定なので、お楽しみに!
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著者一覧

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